AIでつくる。
その先を、どう育てる。
溝上 × 山田英之
酒井形成外科の
OUR GUEST

溝上
MIZOUE
デジタルマーケティング
上級ウェブ解析士

山田英之
HIDEYUKI YAMADA
株式会社カレント
代表取締役
AIを使ってWebサイトをつくる。その取り組みは、公開した後にどう続いていくのか。東京・大塚の酒井形成外科が立ち上げた再生医療の専門サイトで、制作と運用に関わってきた溝上さんと、カレントの山田英之。二人の会話は、AIを使った制作の試行錯誤から、検索、情報発信、集客、そして運用を支える人の役割へと広がった。
写真や動画、趣味のWebサイトづくりから始まり、企業のサイト刷新や顧客情報基盤の構築へ。独学と実務を重ねてきた溝上さんは、何を考えながらAIを仕事に取り入れているのか。これまで一緒に取り組んだ仕事を振り返りながら、つくる技術が変わる時代に、事業を前へ進めるために必要なことを語り合う。
01
デジタルが好きだったところから仕事が広がる
最初は写真とデジタルカメラへの興味だった
山田溝上さんは、会社員でありながら、いろいろな仕事もされているじゃないですか。どういう経緯で今の働き方になったのか、まずそこからお伺いしたいんです。もちろん、喋れる範囲でいいですよ。
溝上もちろんです。意外かもしれないんですけど、そもそもデジタルというものが好きだったんですよね。フィルムカメラのような、いわゆる普通のカメラには全然興味がなかったんですけど、デジタルカメラには惹かれたんです。
溝上もう20年以上前なんですけど、リコーから「RDC-7」という、いわゆるカメラらしくない、不思議な形のデジタルカメラが出たんです。確か当時10万円ぐらいで。私もまだ20代の初め頃でしたけど、それを見て「このカメラが欲しいな」と思ったんですよね。それで、「画像を編集するならMacだよね」と思うようになって。
山田ほう、ほう。
溝上当時はマッキントッシュと呼んでいましたけど、会社にAppleが大好きな先輩がいたんです。その人に「パソコンを買いたい」と相談して、Power Macintosh G3(Blue & White)を買ったのが始まりですね。元々は、写真を撮って編集してみたい、というところから入っているんです。
山田そうなんですね。
溝上そのうち、映像も撮るようになるんですよ。年齢的なこともあったんですけど、周りが結婚したり、会社のイベントがあったりするじゃないですか。そこで写真や動画を撮って、今度は動画を編集するようになって。そうやっているうちに、「趣味のWebサイトをつくって、仲間と交流しよう」となったんですね。mixiやFacebook、X(旧Twitter)といったSNSが広まる前の話です。パソコンでできることの一つとして、仲間と交流するサイトをつくろうと。もちろん当時は、自分でカチャカチャ、コードを書くわけですけど。そういうところから入っていったんですよね。
メーカーでの仕事と趣味のサイトづくり
山田そもそも、何の会社にいたんですか?
溝上最初は、ある大手企業の研究所です。大型ディスプレイの開発部門でした。そこで、技術要員のような形で仕事をしていたんですよね。
山田へえ、すごい。
溝上その後も、別の会社を含めて十数年、製造メーカーにいたんです。品質保証とか、検査とかですね。その間も、写真を撮ったり、動画を撮ったり、Webサイトをつくったりはしていたんですけど、それはずっと趣味で。仕事は全然違うことをしていました。
溝上転機になったのは、その後に移った会社でのことです。会社のWebサイトが古くなったから、新しくしようとなったんです。制作は業者さんにお願いするんですけど、社内で進める人を募集します、と。
山田自分でもつくっているしね。
溝上そうです。積極的にというよりは、「誰もやらないんだったら、私がやりますよ」ぐらいの感じで。50数人ぐらいの会社でしたから、誰かがやらなきゃいけない。「業者さんとやり取りすればいいんですよね」と引き受けたんですけど、いざやってみるとのめり込んじゃうんですよね。「ここはこうしたい」「スマートフォンで見た時にはこうしたい」と、いろいろ出てきて。結局、プロジェクトがどんどん大きくなっていったんです。
山田うん、うん。
溝上新しいブランディングのコンテンツをつくりたい、と会社に提案して、結局、自分で撮影して編集までしてしまって。会社をプロモーションするものをつくったり、Webサイトをつくったりしているうちに、全体が分かってくるんですよ。「ああ、プロの人たちはこういうふうにやるんだ」と。そういうことが評価されたのかは分からないんですけど、その延長で親会社に転籍することになったんです。転籍先では当時、会員を集めて、便利なサービスを提供して、自社のプラットフォームの中で製品を買ってもらう。そうやってライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を伸ばそう、という戦略を進めていたんですね。
溝上その一環で、顧客情報の基盤を新しく構築する、結構大きなプロジェクトに参画することになって。そういう仕事をしていくうちに、Webサイトだけじゃなく、裏側で動くインフラやセキュリティのことも身につけていったんです。そこで本当に鍛えられた、という感じですね。
必要に駆られて身につけた技術と資格
山田じゃあ、実際に仕事をしながら覚えていったんですね。コンピューターの学校に行ったというわけではなくて。
溝上そう、そうです。
山田当時はHTMLからサイトをつくるほかに、制作を助けるソフトもいろいろありましたよね。Dreamweaverとか。
溝上懐かしい。Adobeのやつですね。
山田その頃からプログラミング言語もどんどん変わっていくじゃないですか。そういうところも、ずっと勉強していたんですか?
溝上そうですね。Web上を調べると、用例みたいなものがたくさん出てくるんですよ。全部を一からつくれと言われたら難しいんですけど、サイトの一部分だったり、何かの動作をするプログラムだったり。それを自分の目的に合うように整えていくんです。
山田なるほど。
溝上とにかく真似たり、修正したりしているうちに、「あ、こうするとこうなるのね」と分かってくる。必要に駆られて、ひたすらやっていた感じですね。完全に独学です。
山田ああ、そうなんですね。経歴を拝見すると、いろいろな資格も持っていらっしゃるじゃないですか。あれは次から次へと取ったんですか? ウェブ解析士とか。
溝上はい、まさにそうでしたね。今振り返ると、半分ぐらいは「なくてもよかったかな」と思うんですけど、やっぱり不安だったんでしょうね。学校で専門的に学んできたわけではないので、せめて民間資格だけでも、と。そう思っていたんだと思います。
便利だねと言ってもらえる仕事をしたい
山田そして今は、会社での仕事を続けながら、いろいろなところに関わっている。副業というか、パラレルワーカーというか。それはまた、どうしてそういうふうに広がっていったんですか?
溝上それは、自分でもよく考えるんですよ。「一体何がしたいんだろう」「動機は何なんだろう」と。究極的には、「デジタルっていいものでしょ」と伝えたいんだと思うんです。「便利だね」「これ、よかったね」と言われたいだけなのかもしれませんけど。接点としてはWebサイトやSNSが多いんですけど、いろいろな人にデジタルのよさや便利さを知ってもらって、取り入れてもらう。そこに興味があるんでしょうね。どうしても、お節介したいというか。あとは、どう考えても、同じことをずっとやり続けるのが得意じゃないんです。
山田今は副業OKという会社も増えていますけど、溝上さんの場合、ちょっと「副業OK」のレベルを超えている気もしますよね。
溝上そうですね。会社員としての仕事も大事な柱の一つですが、自分が価値を提供できるうちに、何かしておきたいという気持ちはありますね。それに、山田さんをはじめ、経営されている方は本当に魅力のある方が多いんですよ。お話を聞くだけでも、ドラマを見ているような感覚になるんです。
山田いや、こちらは毎日アップアップで、できることを片っ端からやっている感じですけどね。おかげさまで、新しいお問い合わせも少しずついただくようになって。ここからかな、というところです。
02
クリニックと研究所の仕事を一緒に進める
ノエル銀座クリニックで始まった共同の仕事
山田元々、一緒に仕事をするようになったのは、銀座の美容クリニック「ノエル銀座クリニック」の頃でしたよね。ご紹介いただいて。
溝上そうですね。
山田クリニックのWeb周りをどう進めていくか、事務長やスタッフの皆さんにお話しして。集客とか、リピートとか、メニューとか、そういうプランをつくって、毎週通って説明していましたよね。Instagram周りのことも少しやりながら、1年ほど関わらせていただいて。
WebとSNSを事業の現場につないでいく
山田その後が、子どもの発達に関する研究や情報発信をしている「子どもの発達科学研究所」ですね。ここでもマーケティング周りに関わって。
溝上あちらは発信する媒体が多くて、大変でしたね。
山田Web、オウンドメディア、SNS、それからメルマガ。毎週のようにオンラインでミーティングをしていましたね。
山田そうした仕事があって、その後が、今取り組んでいる酒井形成外科の再生医療サイトです。関わり始めたのは、ちょうど1年ほど前でしたよね。
03
AIで再生医療サイトをつくるという挑戦
どうやってつくるのかから始まった
山田この案件で「AIを使ってWebサイトをつくりましょう」となったわけですよね。今はずいぶん短い時間でつくれるようになってきましたけど、当時は「どうやってつくるんだ」というところからで。AIでも、画像などの一部分はつくれていましたけどね。僕なんて、その頃はほとんど「ChatGPTって何だっけ」ぐらいの世界だったんですよ。あのタイミングで、お客様にご提供できるものをよくつくれたな、と今は思うんです。AIを使えば工数を減らして、コストも抑えながら形にできるんじゃないか、ということで始めたわけですけど。
溝上そうですね。
山田実際には、なかなか大変だったと思うんです。そもそも、再生医療サイトはどういう構造でできているんでしたっけ?
WordPressのテーマにAIでつくった部分を組み込む
溝上当時も、一から全部自動で、例えば一晩でサイトをつくるのは難しいだろうと思っていたんです。ただ、今回つくろうとしていたのは、サテライトサイト、つまり本サイトとは別に、再生医療というテーマだけを扱う専門サイトだったじゃないですか。クリニックのメインサイトを急いで立ち上げなきゃいけない、という話ではなかった。
山田はい。
溝上なので、AIでつくった部分を手動で直したり、メンテナンスしたりする前提で考えれば、十分対応できるだろうと。その範囲なら、工数を抑えることと仕上がりの品質のバランスが取れそうだなと思っていたんです。もちろん、当時はまだ不確定な要素も多かったです。「万が一うまくいかなかったら、どうカバーするんだろう」ということも考えていました。元々再生医療サイトは、WordPressの「テーマ」、つまりサイトのデザインや構造の型を土台にしているんですね。その上に、AIでつくった部分を組み込んでいく形にしたんです。
手を入れられる範囲を見極めて進める
溝上万が一うまくいかなければ、自分の工数の中で、通常どおりサイトをつくればいいかな、と。そういうプランBもあったので、少しチャレンジングではありましたけどね。
山田うん、うん。
溝上AIに任せるのは、ページ全体ではなく、セクション、つまりページ内の区画ごとにしました。セクションごとなら十分つくれるし、画像生成もある程度できる。そこは見通しがあったんです。今なら、サイトを上から下まで一気につくることもできると思うんですけど、当時はセクション単位でした。そうすれば、ある程度工数を減らしながら、自分一人でつくっていけるというところがあったんですよね。
山田そうしてAIを使ったWebサイトをつくって、納品して、今は運用していると。ここからは、公開後の運用に向けて溝上さんにつくっていただいた改善計画をどう進めていくか、という話ですよね。
溝上そうですね。
04
公開したサイトを検索と集客につなげる
まず何に取り組むかを絞る
山田つくったサイトをどう運用して、改善して、アクセスを集めて集客につなげるか。そこが次のテーマだと思うんですけど、そんなに簡単に検索順位は上がらないですよね。何を工夫するのか、新しいページを増やすのか。SEOの話にもなると思うんですけど、時代も仕組みもどんどん変わっていますし。その辺り、今できることを教えていただけますか?
溝上そうですね。今回の提案は、とにかく「今、何ができるか」に絞っています。全体を一度に進めるのが難しくても、その中で取り組めることは何だろうと。ある程度の規模感やメリットがあって、単独でも進められる入口を考えているんです。今回でいえば、再生医療というテーマを、より身近な悩みと結びつけて捉え直す切り口ですね。結局、基本的には「SEOをやりましょう」ということなんですよね。
AI検索の時代にも残るSEOの土台
溝上今は、ChatGPTやGoogleのAI検索などで、自社の情報を回答に取り上げてもらうための対策を、LLMOとか、AIOとか、GEOとか、いろいろな呼び方をしますよね。最初の頃は「SEOは終わった」「これからSEOをやっても仕方がない」なんて話もあったんですよ。でも実際は、従来の取り組みがなくなったわけじゃない。その上にAIに対する対策が乗ってきた、という捉え方をしています。だから、下支えしているSEOは、やっぱり続けなきゃいけないんです。
山田うん、はい。
溝上そこにブランディングやPRが関わってきて、さらにUGC、簡単に言うとユーザーの口コミのようなものも大事になる。結局、「全部やらなきゃいけないですね」という話になっちゃうんですけど。まず、その下支えとしてSEOが必要なんです。
溝上考え方は、大きく二つあります。一つは、AIが持っている情報の中で、自分たちの事業がどう認識されているか、ということですね。例えば、「この会社について教えてください」と聞くと、どんな事業をしていて、経営者は誰で、ホームページはここです、と答えが出てくる。でも、その情報が間違っていることもあるんですよね。
山田うん、うん。
溝上だから、まず自社のホームページを正しくつくって、関連する情報も正しく整える。AIにどう理解してもらうかを考えても、やることはそこなんです。そこは徹底してやらなきゃいけないと思っています。
溝上もう一つは、AIがWebサイト上の情報を集めて回答する場合です。いろいろなサイトの情報を組み合わせて答えるので、自社サイトだけじゃなく、関連サイトやまとめサイトでどう紹介されているかも関わってくるんですよね。そのためにも、クリニックとして何を打ち出すのか。得意な施術とか、価値を提供できるところを、一度絞ってでも伝えていく。何かのキーワードで見つけてもらえる状態をつくらないと、調べられた時に候補として出てきにくいんです。最初から一番大きなテーマで競うんじゃなくて、ある程度検索されているけれど、中心から少しずらしたところですね。まず、そこを取りにいきましょうと。
サイトごとの役割と日々のコンテンツ改善
溝上酒井形成外科さんの場合は、サイトがいくつもあるんですよね。クリニックの本サイト、医師を紹介するサイト、今回の再生医療サイト。以前からあるLP(広告などから誘導する1ページ完結型のページ)のようなサイトもあるので、それぞれの役割を考える必要があるんです。みんなで同じところを狙って、情報が競合してしまわないように調整する。本サイトで扱っている再生医療のキーワードとは、少し違う切り口から検索を取りにいく。そういうことも意図しています。
山田サイトごとの役割分担やキーワードの調整は、具体的にどういう作業をするんですか?
溝上キーワードに関する内容を、ページの中に書き加えていくんです。例えば、Q&Aを盛り込んだり。基礎的なところでいうと、ページの説明とか、サイトの構成に関わる部分を整えたりですね。あとは、すでに発信している院長のお話などを、伝わりやすい形に整え直す、とか。すでにある内容をどう見せるか、ということもポイントだと思います。
山田ページに書いてあることを、追加したり、変えたり、修正したりしていくわけですね。
溝上はい、まさにそこです。これから新しく発信する時にも、伝えたいテーマを意識していただけるとありがたい、ということもお伝えしています。
自分たちは何者なのかを伝える
溝上AIが出てきてから、よく「エンティティが重要」と言われるようになったんです。エンティティは実体とか存在を表す言葉なんですけど、ここでは「あなたは何者ですか」ということだと思ってもらうと分かりやすいですね。例えば、「酒井形成外科さんって、どんなクリニックですか」と聞かれた時に、「何々が得意な形成外科医がいる、大塚の美容外科です」と答えられる。その「何々」の部分が肝なんですよ。以前は、具体的な検索キーワードを一つずつ捉えて対策しましょう、という話が多かったと思うんです。今は「この業界に強い会社を挙げてください」というように、もう少し広く聞かれることもある。その時に、AIがその会社をどう認識しているのかが関わってくるんですよね。
溝上再生医療を打ち出したいなら、そのクリニックの情報の中に再生医療という言葉や、それに関わる内容が出てくる必要がある。じゃあ、どんなキーワードが必要なのか、何を書いていけばいいのか、関連サイトにもその情報があるのか。そういうところを考えるんです。事業者さんが「これをやりたい」と思っていることと、外に出ている情報の割合って、必ずしも同じじゃないんですよね。だから、発信する内容を揃えていくことも大事なんです。大きなテーマでいきなり存在感を出すのは、とても大変なので。まずは、もう少し絞った切り口から取り組んでいこうと。
山田なるほどね。
溝上基本的なやり方は、これまでとつながっているんです。ただ、一つ一つのキーワードだけじゃなく、それらを含めて「何者なのか」が伝わるようにしていく、ということですね。
院長の技術や考え方を一つずつ発信する
山田今回の改善提案も、しっかり作業に反映して、成果が上がってくるといいですよね。
溝上そうですね。全体の導線をどうするかもありますし、メニューの設計とか、施術料金とか、立地とか。関わるものはたくさんあるので、調整できる範囲で、我々も積極的に関わっていきたいですよね。
山田そうですね。技術的なところは、クライアントには分かりにくいこともあるので、なるべく具体的にしていかないと。そういう意味も含めて、今回は、PRなどの企画も合わせてご提案したんです。
溝上いや、もう山田さんの資料は、本当にすごいですよ。
山田いやいや、これはビジュアルがあるので、そう見えるところもあるんですけどね。結局、いろいろなことをやらないといけない。場所であり、先生の技術であり、実績であり、発信できるものはたくさんあるわけです。それをどう伝えるか。その作業にAIを上手に組み込めれば、業務の効率も上がるんじゃないかなと思うんですよね。
溝上まさに、院長を中心に置いて、その周りをPRやSNSなどの発信が囲んでいる図をイメージすると分かりやすいんですけど。
溝上それがまさに、エンティティの話なんですよ。「酒井先生は何者ですか」ということですね。
山田なるほど。
溝上発信する場所によって、言っていることがばらばらになると、何をしている人なのか分からなくなっちゃうんです。再生医療を打ち出したいのに、別の場所では違う面ばかりが伝わっていると、全体像が揃わない。「誰に向けて、何をしている先生なのか」。そこを、いろいろな発信の中で揃えていきたいんですよね。
山田そうですよね。スタープレイヤーである院長のキャラクターとか、技術とか、考え方とか。そういうものがしっかり伝われば、集客にもつながっていくと思うので。
溝上そうですよね。
山田それを丁寧に、一つずつ積み重ねていくということですよね。やれることがいっぱいあるので、企画もたくさん考えたんですけど。
溝上もう、すごいですよ。本当に。
山田でも、全部はできないのでね。まず「やれることはこれだけありますよ」とお見せする。それと、見た目にもちょっと盛り上がるものは必要だと思うんです。例えばインフルエンサーも、美容医療について語る、ユーザー側の代表と見ることができるかもしれない。もちろん、参加していただくにはコストもかかるし、簡単にお願いできるものではないですけどね。今の市場はどうなっているのか、どんな人が発信しているのか。そういう外の話も入れていくことで、視野が広がるんじゃないかと。
山田酒井形成外科さんとのお仕事も2年目に入っていくので、さらに成果につなげていきたいですよね。
溝上そうですね。
山田集客の支援は、ネットの中だけの話じゃないんですよ。いろいろ絡んでくるので、何か一つやればいいということでもなくて。実際にお客様に来ていただくためには何が必要なのか。それを全体としてどう提供していくか、ということだと思うんです。「これだけやっていれば集客できる」というのは、もうほとんどないんじゃないかなと。その中で、AIをどう上手に活用するかですよね。
05
AIと顧客の間に立ち運用まで考える
できそうだと思うことと実際にできること
溝上皆さん、「AIでできそう」というところまではイメージされると思うんです。でも、「じゃあ、実際にやってみてください」となると、やっぱり難しいですよね。山田さんも経験されていると思うんですけど、「意外に手間がかかるじゃないか」と。
山田そう、そう。今でも、イメージしたものがピカッとできるわけではないんですよ。しかも、一つできたから二つ目をやろうとすると、同じ品質やトーンのものを再現できない。「できないじゃないか」となるんです。
溝上そうなんですよ。お客様の要望は感覚的な言葉で出てくることが多くて、そのままではAIへの具体的な指示になりません。だから、まだ誰かが間に入って、言葉を置き換えないといけないんですよね。
山田そうですね。
システムの事情も仕事の経緯も伝える人がいる
溝上言葉の置き換えもそうですし、やっぱり文脈や情報が大事なんです。でも、それを当事者だけでは補いきれない。「システム面ではこういう事情があります」とか、「お話には出ていませんけど、こういう経緯があったんです」とか。あるいは、「こちらから見ると、こう考えていらっしゃるのかもしれません」とか。そういうところを、誰かが補っていかないと、まだ難しいですよね。
山田うん、そうですね。
溝上だから、こちらがAIを使い慣れていることも大前提だと思っています。「どこまでできそうですか」「何ができますか」と聞かれた時に、答えられないといけないので。これまでも、デザイナーとエンジニアと顧客の間に、ディレクターがいないといけない、という話があったじゃないですか。
山田ああ、確かに。
溝上そこにAIが入ってきた、という感じですね。でも、やっぱりまだ、間に入って整理する人は必要なんです。
つくった後は誰が運用するのか
溝上あと、会社員としての仕事でも感じるんですけど、「運用まで考えていますか」というところはありますね。
山田なるほど。
溝上「つくれます」と言われれば、「いや、そりゃそうでしょう。つくれるでしょう」と。でも、つくった後に、これを誰が運用するんですか、というのがすごく問題で。例えば、「もうこんなExcelはいりませんよ。自動でできます」と言われるんですけど、その時はできるんでしょう。でも、そこから半年、1年と、みんなが同じように、ボタン一つで使い続けられるんでしょうか。そこは、本当に疑問があるんですよね。じゃあ、何かトラブルが起きた時は、どうやって元に戻すんでしょうか、と。そこまで考えないといけないんです。
現実の仕事にある情報を補っていく
溝上技術が進んで、本当に何もかも自動で生成される社会になれば、そういう役割もいらなくなるのかもしれません。でも、今の現場には古いシステムもあるし、デジタルになっていないデータもあるんですよね。機械やAIからすると意味の分からない言葉とか、業界独特の話もある。渡すデータにノイズが多いと、出てくるものが現実とかけ離れてしまうじゃないですか。そこは、人間の直感だったり、これまでの関係があるから分かることだったり。そういうもので補っていかないと、まだ難しいんですよね。そうしないと、「結局、使えないじゃないか」という話になっちゃう。昔、「俺はExcelに嫌われているからさ」と言う人がいましたけど、使いこなせないまま道具のせいで終わってしまう。AIでも同じことが起きかねないんですよね。
山田いやあ、まだ少し時間はかかりそうですね。
溝上本当にそうですね。
山田ただ、その課題を乗り越えてくるようなスピードで、AI自体も進化してきますからね。もう、本当にいたちごっこみたいな感じもあります。
溝上そうですね。あと何カ月か先には、どういう世界になっているんだろうと。特に、デジタルで完結する世界は、本当にちょっと想像を超えていくんでしょうね。
対談を終えて
デジタルカメラへの興味から、写真、動画、Webサイトへ。溝上さんの仕事は、手を動かしながら覚え、その時に必要なことを引き受ける中で広がってきた。「便利だね」と言ってもらいたいという思いは、企業での仕事にも、社外の事業を支える活動にもつながっている。
酒井形成外科の再生医療サイトでも、AIがつくる部分と、人が手を入れる部分を考えながら制作を進めた。公開後には、検索での見つけられ方、伝える内容、PR、集客をどうつなげるかという課題が続く。AIを仕事に取り入れる時にも、顧客の事情を理解し、必要な情報を補い、運用まで考える人がいる。二人の会話からは、つくる技術の進化を受け止めながら、その先の仕事に向き合う姿が見えてくる。
PROFILE

溝上(みぞうえ)
デジタルマーケティング
メーカーの研究所での技術業務や、品質保証・検査の仕事に長く携わる一方、写真・映像編集やWebサイト制作を独学で習得。勤務先の企業サイト刷新をきっかけに、Web・コンテンツ制作や顧客情報基盤の構築へと仕事を広げ、インフラやセキュリティも実務を通じて身につけた。現在は事業会社で、ブランドサイトや会員向けサイトの運用、SEO、CV改善、SNS・広告運用などデジタルマーケティング全般を担当している。
2019年からは会社員としての仕事と並行して、Webサイト分析とCV改善を中心としたデジタルマーケティング支援を行う。クリニック、メディア、IT、教育、住宅など幅広い業種で、戦略立案、サイト・LP構築、オウンドメディア、SEO、広告・SNS運用、効果測定から、継続して運用するための体制づくりまでを支援。写真・映像の企画・撮影・編集も手がける。
カレントとは、ノエル銀座クリニックや子どもの発達科学研究所のマーケティング支援などで協働。酒井形成外科の再生医療サイトでは、WordPressを土台にAIで制作した部分を組み込む方法で構築を担い、公開後の運用・改善にも関わっている。「便利だね」と感じてもらえる仕事を目指し、技術と事業の現場をつなぐ活動を続けている。
【資格】上級ウェブ解析士/上級ウェブ広告マネージャー/上級SNSマネージャー(一般社団法人ウェブ解析士協会)、ITパスポート ほか

山田英之
株式会社カレント 代表取締役。事業の企画や運営、情報発信に携わり、溝上さんとは、クリニックや研究所のマーケティング支援などを通じて共同で仕事を進めてきた。酒井形成外科の再生医療サイトでは、制作後の集客やPRを含めた取り組みを進めている。
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